2025年8月12日、『モンスターハンターワイルズ』公式よりディレクターレターが公開された。
その中の片手剣に関する項目に於いて、とても気になる記述があった。
今作では特に初心者でも扱いやすい武器であることを意識し、どのアクションでも一定以上のダメージが出せる調整を目指しています。
その中で、一部アクションについては使いやすさに対して出せるダメージが、他武器種と比較した際に高くなりすぎている部分があったため、タイトルアップデート第2弾にて下方調整を含む形でバランスの調整を行いました。
これらの調整の中で、ガード斬りの下方調整により反撃斬りを繰り出せる頻度が減ったことを鑑みて、反撃斬りの威力をわずかに上げるよう再度調整を行います。
「初心者でも扱いやすい武器」この一言に疑問を呈したい。
事前に伝えておくが、私はワイルズ全般に対しての評価はシリーズとしても、ひとつのゲームとしてもかなりの低い評価を付けている。多少言葉が荒くなることを理解した上で続きをご覧頂きたい。
そもそも初心者とは?
ゲームに限らず、どの界隈でも初心者は存在する。では、どのレベルまでが【初心者(ビギナー)】と呼ばれ、どのレベルから【中級者(ミドル)】と呼ばれる様になるのか。
ルールを理解してから?手解きが不要になってから?それとも経験した時間に応じて変わるのか?
曖昧なものであり、明確に定義できることではない。しかしそれでは話が進まないので、モンハンの特性を踏まえた上で私が思う≪ゲーム初心者の特徴≫を4つ挙げる。
※これらが当てはまる=初心者とは限らないことはご理解頂きたい
性能より見た目から入る
「カッコいい!」「かわいい!」といった武器やアクションを手に取りやすい。
昨今、SNSや動画サイトなどでクリップを多く目にするようになって、「やってみたい!」と思わせるシチュエーションが増えている。特に≪現実離れ≫した内容である程、そういった感情が起こりやすい。
太刀や双剣、弓は見た目のカッコよさで選ばれがち。操虫棍やチャージアックスなどはアクションの派手さから触ってみる人も多いだろう。
単純な強い行動を繰り返す
上の内容に類似するものであるが、こちらは少し性能面の話になる。
所謂≪ワンパターン≫であるが、「これを当てれば強い!」と言われている一撃やコンボのみを繰り返す。例えそれが最適解になっていないとしても。
「最強戦法」「これだけでいい」なんて煽りのある動画も多く、事実それらが人気になる理由も単純明快≪分かりやすい≫から。
実際に強くなくても「強そうだから」といった場合や「その操作しか知らない」といった場合もある。
大剣やハンマーの「溜めて叩く」というアクションはこの特徴に当てはまるでしょうね。
操作できるのはワンハンドにつきワンボタン
同時押しや異なるボタンを順番に押すといった操作は基本できないしやらない。極端な話、ファミコンのボタン数が初心者の限界と思ってもよい。
順番押しに関しては、モンスターとの対峙中には難しい操作であり、「タイミングよく押す」という操作も同じような操作難度。
一方、長押しや連打は簡単に出すことができ、むしろ単発押しの方が難しい。
狩猟笛はどう考えてもこの特徴から外れる。
見ているのは操作キャラクター
ボタンを押してキャラクターがその通りの動きをした事を視ているのである。つまり≪視野が狭い≫という事。
「この操作でこう動く」ことを理解して周囲を視ている行動が取れるのはゲームが上手い人。
この特徴は上手い人ほど無意識にやってしまいがちなので、理解されがたい特徴である。
片手剣が≪初心者向きの武器≫と言えない理由
さて、ここまではゲーム初心者の特徴であり、ゲームの性質とは関係のない話。
武器を振るだけがゲームではなく、それをモンスターに当てて初めてゲームとして成立する。
結論から言うと「武器を振る」なら初心者向けとも言える。振るだけで楽しいのならそれで良いが、このゲームは【ハンティングアクション】である。振るだけがゲームの本質ではない。「狩りをする」なら中級者向けである。
リーチが短い
当たらなければ意味がない。当てる為にはモンスターに近づかなくてはならない。
モンスターに近づくことは、被弾のリスクも上がるという事。
ただでさえ狭い視野はさらに狭くなる。モンスターの動きを捉える難易度も上がる訳である。
リーチの短さのメリットは「狙った部位に攻撃しやすい」ことであるが、そこまで考えて動ける初心者はいないだろう。
単純にデメリットのみが露呈しているだけである。
できることが多い
器用万能と言えば聞こえが良いが、活かせなければ宝の持ち腐れ。
できることが多い代わりにそれぞれの性能は控えめで、適材適所な立ち回りが求められる。
選択肢の多さこそが片手剣の魅力であり面白さであると私は思っている。
だから、この魅力を体感できない初心者の期間はつまらない。魅力が伝わらない
同じ技を擦るならば他の武器の方が向いているし楽しいだろう。
使いこなしてから楽しいというのはどの武器にも言える事ではあるのだが……
爽快感のある技が無い
強いて挙げるならば「バッシュアッパー」だろうか。
ダメージ然り、アクションのシルエット然り、全体的に小ぶり。双剣ほどのスピード感もなく、ハンマーのような重みもない。
シンプルが故に地味であることは隠せない。
一応、ジャストガードが爽快という意見はあるが、それは従来の片手剣を知っていてこその意見だろう。
私がガード主体の片手剣が好きじゃないというのもあるけど、片手剣でやることがガードというのは如何なものか。
操作を要求される場面が多い
攻撃の隙が少ない特徴が裏目にでている。次から次へとボタンを押していく操作を絶え間なく要求される。
連打で解決する話ではあるが、どちらにせよ操作が忙しいこと変わりはない。
適当に押しているという事は、自分が今何の攻撃を出しているのか見失ってしまうことにもなりかねない。
「なんかわかんないけど倒せた」では狩りをしている実感、楽しさが生まれない。
ひるみ耐性がない
致命的。初心者こそ、みんなでワイワイやって遊ぶべきにも関わらず、味方の攻撃で自分が動けなくなるのだ。
スキルを付ければ対策できるが、逆に言えばスキルを付けないと対策できないのである。
そもそもストーリー序盤ではそのスキルすら付けられず、なんで攻撃がでないのかすら分からない状況にもなりうる。
友人から手解きを受けながら遊ぶというのも楽しみのひとつではあるが、それはモンハンに限った話ではないからな。
開発の想定と矛盾
恐らく、私が考えている初心者と、開発が想定している初心者のレベルに差異はあるのだろうが、どう考えても開発の想定とゲームデザインが噛み合っていない点が多くみられる。
正直、まともにプレイしたことが無いんじゃないか疑うレベルである。
最初に手にさせる武器が【大剣】
初心者向けを謳っている割には、最初に持たせてくれない。
大剣も同様に初心者向けとしているのかもしれないが、ストーリー上の都合としか思えない。
前作のライズでは初期武器は太刀だった。前々作のワールドでは自分で選ぶ形式。
そもそも14種もある武器を最初に選ばせることが酷である。
自然な流れで手にさせた武器が「それ初心者向けじゃないよ」と言われたら意味がわかならない。
サポートに向いた武器
抜刀中にアイテムが使えるって、唯一無二のサポート性能なんですよね。そして片手剣の固有能力でもある。
でも “サポート” って自分に使う言葉じゃないと思うんだ。
初心者が他者を気遣う余裕なんてあるか?ヒーラーになれる?狩りをしろ狩りを。これはモンハンだぞ。
ちなみに、私は片手剣がサポート武器だとは1mmも思っていない。
ただアイテムを使えるのが早いだけで「サポートの様なこともできる」ひとつの選択肢にすぎないと考えている。
どのアクションでも一定以上のダメージが出せる調整
適当に出しても強い!と言えば聞こえは良いが、どれを出しても同じなら、他のアクションを使う必要がないよね?
じゃあ他のアクションを使う理由は?恐らく見た目の違いを楽しみたいが最初に来るだろう。
でも片手剣のアクションは動きが小さくどれも似たような感じ。「溜め斬り落とし」「落下突き」「フォールスラッシュ」の見た目の違い分かりますか?
見た目の時点で他のアクションを使わせる理由がないのに、アクションの性能で差別化をしないせいで本当に適当に振るだけになっている。
チュートリアルにもなりゃしない。
強すぎる
基本的に初心者向きの武器というのは成長の踏み台にすぎない。まずは簡単だが弱い武器、次に難しいけど強い武器となるのが自然。
でも簡単な武器が強かったら?誰も難しい武器なんて手にしないよね。
しかし、モンハンのゲーム性で完全初心者向けの武器種を作ることは不可能。ならばどうするか。
基本のアクションは簡単だが弱い、癖のあるアクションは難しいが強い、とするべきだし大抵の武器種はそうなっている。
でもワイルズ片手剣は基本のアクションが十分に強いのだ。今までは△のコンボ(剣盾コンボ)が弱かったから何とか成り立っていたのである。
初心者向けって強けりゃいいわけじゃないんですよ
本当の≪初心者向きの武器≫は何か
私は【太刀】だと思います。
攻撃の当てやすさ、動きの派手さ、基本攻撃と鬼刃斬りの強さの差、どれを取っても初心者向けと言えるでしょう。
そして上級者にも楽しめる派生の多さやシビアさがとても良いバランスで成り立っている様に感じます。
少なくとも片手剣ではない。これだけは自信をもって言える。
武器の特徴やゲーム性に合わないのに、無理やり初心者向けにチューニングさせられている様。
そして上級者には満足できない仕上がりになってしまった、と。
最後に。
少なくとも、今回開発の片手剣に対する考えを知れたのは大きな進歩である。
楽しんでいる皆さまには申し訳ないが、私はワイルズ片手剣が本当につまらない。そもそものゲーム性や前作からの落差の影響も多少はあるが、片手剣が楽しくないと感じてしまったのは紛れもない事実。
100人が遊んで100人が全員楽しめるゲームなどないという事も理解しています。
いくらシリーズ作品とは言え、方針も変わる。合わなくなることもある。変化だって受け入れるつもりでした。
でも、開発の意図が分からなかった。どうしてこうなったのか理由が欲しかった。変化を超えるほどの別の楽しみが欲しかった。
……この話は長くなるのでやめよう。
これは推測にすぎないが、開発は「プレイヤーを増やす為の初心者向け」を意識している。探索や釣りを楽しむ人、着せ替えや写真で楽しむ人、狩りに限らない遊びをする多様なプレイヤーを増やそうという意図を感じる。
一方私は「ハンターを増やす為の初心者向け」を意識している。あくまでも狩りがメインコンテンツ、それが最も触れてもらいたいことであると意識していたから、今回のような疑問が生まれたのだ。
片手剣が初心者向けかどうか、あなたはどちらだと思う?
答えの出す必要のない話ではあるが、一度考えてみる事をオススメする。
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